2008年07月18日

片山善博教授の講演についての雑感


上のニュースについて。そもそも「投資」って行為の意味を分からせる必要がありますな。これは…。

さて。

先日慶應義塾大学法学部で教鞭をとっていらっしゃる片山善博教授の講演を聞く機会がありました。片山教授は以前鳥取県知事を二期務めていた方で、地方行政の現場、それこそ泥臭い部分まで知っていらっしゃる、理論と実務両方の体現者ということになるでしょうか。講演内容も必然、「地方からの再生と日本の将来」という、地方に関する話がメインとなったのですが、やはり現場の話は面白い!身をもって知ったいろいろな話題をユーモアも交えてわかりやすく話してくださいました。

彼が何より強調していたのが、地方の経済主体の根強い官依存体質でした。箱モノ行政なんてことは前々から言われていますが、相変わらず土木業はそれで食っている状態。また農業従事者は完全に国からの農業補助金を目当てに農作物を作っている。知事時代、農家に視察に行ったときに、「知事さん、来年は何を作ればよいでしょうか?(何を作ると補助金が多くもらえますか?)」と当たり前のように質問されたそうで、「農家は消費者やマーケットなどはまったく見ず、完全に政府の方ばかり見ているのだな」とまざまざと感じたと語っていました。東京にいるとあまり官依存の経済活動を実感する機会はないかもしれないが、地方は想像以上だと、そんなことも言っていました。

そしてもうひとつ、片山教授は地方自治体を支配する中央省庁も激しく指弾していました。様々な省庁が縦割りで、地方に対して地方交付税や補助金をぶらさげて、骨抜き・借金漬け・愚民化しようとしていると、強い口調で語っていました。財政破綻した夕張市の市長室には、模範自治体として自治省から昔もらった表彰状が飾ってあったのだそうですが、その結果があれだと。中央省庁を信じて、借金を重ねて補助金目当ての事業を繰り返し、小泉政権時代に補助金がぷっつり切られたとたんに、どうにもこうにも回らなくなった。

そんな話を聞いているうちに、地方自治体というのはベッドに横たわる入院患者のような気がしてきました。何本も何本も注射の針が身体に刺さっていて、チューブでいろんな交付金・補助金が点滴されている。回診で小泉という医者が来て、「お前ら自分の力で元気になれ!」と言って、ハサミでばさばさとチューブを切って、ベッドから追い出しにかかった。そしたら患者が、急に容態が悪化してのた打ち回った。小泉医師はそれを横目に「改革には痛みが伴う」と言って、去っていった。その後患者の一人がのた打ち回った結果、口から血を吐いて死んだ。それが夕張市。そんなイメージでしょうか。

片山教授は「地方自治は自業自得(地業地得かな?)」と何度も強調しています。官に任せず、自分で考え、自分で行動する力、そういうものをいち早くつけていかなければいけない。中央省庁も、もっと地方を自律させ、地方の課題を自ら解決させる方向に向かうべきである。それが講演の結論でした。

わしもまったくその通りだと思います。まったくの抽象論ですが、その実現のために必要なのは選択と集中。経済的に大きな利益をもたらすと予想される核となるものがその地方にあれば、それに資源を集中させ、人や組織を巻き込み、大きなうねりを一気に作り出す。衆目を引き付け、世論を動かし、揺るぎないイメージまずは構築し、それに負けない事実と実績も同時に築き上げるということ。実体と評判の正のスパイラルをうまく作ることができれば、他には負けないその地方ならではのエッジが立てられます。

選択と集中のウラには排除と淘汰。そこは申し訳ないが、人情を捨てて大鉈を振るうしかない。その「悪役」を演じる役者が地方に育つかどうか。それとも小泉医師のような凄腕を、外部から連れてくるのでしょうか。彼が通ったあとには血の雨が降るのでしょうが、その向こうに虹がかかるかもしれませんね。

片山教授の話を聞いて、最も感銘を受けた言葉があります。今は教授という立場で、地方自治の第一線からは退いたけれども、「自治体をちゃんとさせる。これが私のライフワークです」と。地方のために、国のために、自分の人生を捧げて役に立つことをしようという彼の言葉には、人の心を動かす確かな力がありました。わしも微力ではありますが、仕事を通じてこの国の役に立っていきたい。勇気をもらえる言葉でした。

ちなみに。わしが前回書いた大分の教員汚職問題。やはり片山教授も怒っていらっしゃいました。曰く、「小学校中学校の義務教育は、誰であっても等しく教育を受けるためのものであり、その制度趣旨は『機会の平等確保』にある。今回の事件は、その義務教育の担い手ともあろう者が、賄賂という手段で積極的に『機会の不平等』に加担した事件であり、言語道断だ」とのこと。

やはり慧眼。ろくでもない先日のわしの記述と比べて、同じテーマでここまで違うものかと、改めて自身の不明を恥じた次第であります。はい…。
posted by サイダー at 14:09| Comment(4) | TrackBack(0) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あるとき地方の中小企業の財務諸表をいくつか見せてもらいました。 赤字だらけでした。社長に何でこれで倒産しないんですかと聞きました。社長は答えました、国から補助金がでてるから、と。
我々が東京で働いて納めた税金はこうして地方に再分配されるのでした。これでも都市と地方の格差として、都市は悪者にされるのでした。
Posted by NEET東日本(×NTT東日本) at 2008年07月18日 23:14
まあ既に総括された事柄ですが、

組織の威信のために予算を確保しバラ撒く官僚と、そのカネを地元に引っ張り込むことで票を得ている議員と、それを当てにしてやりくりを考えている地方の経済主体と、「地方はけしからん」と言いながら首都圏に逃げ込んできた地方出身者と、何も知らずに暮らしている都会人の共犯関係でしょうね。
Posted by saida at 2008年07月21日 00:01
 そうそう、片山元知事が教授になってるんだよねー。知り合いの後輩に時間割見せられて驚いた。
 片山教授は、やはりニューリーダー知事と呼ばれた人達の中でも本家本物だから、学ばされるところが大いにあるねえ。我も講演聴きたかったね。
 ただ似たような立場でも、藤沢にいる元宮城県知事の浅野史郎教授ってのはマガイモノなので皆々様には注意していただきたい。。
Posted by うじょう at 2008年07月21日 19:33
浅野さんも教授になっているんですな。俺あの人に一票入れたんだけど、落選した後のことは知らなかった(笑)

片山教授は聞けば聞くほど立派な方だねえ。広い国際フォーラムの席も、聴衆でぎっしり埋まっておりましたよ。
Posted by saida at 2008年07月22日 10:20
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