2009年01月19日

最近の若者に対する言説についての雑感



09年第2回目の記事でございます。今年もこのくらいのペースで更新していきたいと思います(自分への楔)。

上のニュースについて。日本より一足先に、台湾ではやっちゃっております。この政策が良いか悪いかは別として、まだあちらのほうが機動的とは言えるのでしょうね。

さて。

ちょっと前の東洋経済の特集のテーマが「若者」でした。酒を飲まない、安定志向など、最近の若者の特徴や行動の傾向を解説し、マーケティング向けに若者の攻略法のようなことも載っていました。読んでいてなかなか面白かったです。

アジアの大学で教鞭を執る大前研一氏は、今の日本の若者は外国と比較して「やってやろう」「挑戦しよう」という気概がなくなってきている、国家にとって大きな問題だと憂う。確実に一定数は優秀な学生がいるものの、日本からの海外留学生の数は年々減少しているようです。

かたや『希望格差社会』『婚活時代』などの著者である山田昌弘氏は、かつて製造業を行う大企業が生産拠点を次々に海外に移したことや、ITが進化したこと、周辺業務のアウトソース化が進んだことによって、国内で専門的職能を要求される雇用が創出されにくくなったと指摘。仕事のパイが減ったにもかかわらず、いい歳をした大人たちがある程度のポストに居続けたことにより、若者には(ルーチンワークなど)それほど職能の必要とされない仕事ばかりが供給されてしまっているとして、彼らをかばう。

ふたりのコメントからは、社会構造の変化によって不利な状態が形成され、常態化し、さらに経済情勢の悪化によって、精神的にも、物理的(金銭的)にも、身動きが取れず縮こまった状態に追いやられてしまった若者像が浮かび上がってくる。実際にフリーターや派遣労働に従事する若者の数は2000年に入ってから激増しているようだ。それに伴い、若者の可処分所得は年々減少し、当然のことながら消費も減少。支出の内訳のかなり大きな部分を「預貯金・投資」が占めているという実態がある。

個人レベルの実感値としても、理解できる部分は多分にある。まず、自分自身がおそらく「若者」に該当するであろう年齢だが、あんまり消費の意欲がない。特に自動車。最近こそ、子供もできたので、移動の手段として購入しようかと考えたりするものの、あくまで「必要性に迫られて」検討するのであって、そうでもなければ欲しいとも思わない。しかも毎度タクシーを使って移動するほうが、トータルで見ればよほど金がかからないなどという話を聞くと、「じゃあ、いいか」となる。こんなもんです。

あとは、いまだに大学の後輩などからOB訪問を受けたりもするけど、やはり彼らも「守り」に入っているなと感じることが多い。特に最近はこういう経済情勢だからなのかもしれないけど。自分たちがどうなってしまうのか、戦々恐々としているようでした。皆素直で、とても優秀そうなかんじがするのですがね。

では、こういう若者の現状は、果たして問題なのかどうか。面白いことに、古代エジプト文明のころの古文書を解読していったところ、「最近の若いもんはなっとらん」という文章が書かれていたそうです。上の世代から見た若い世代というのは、いつの世の中でも「困ったもの」らしい。そういう「大人たちの基準でのエゴ」などでなく、本当の意味での問題が横たわっているのかどうか――若者たち自身が今の状況に悲鳴を上げていたり、このままでは国家が立ち行かなくなってしまったり――を考えた場合の話ですが、やはり、今の状態はまずいのかなと思います。

ここで東洋経済の特集に戻りますが、「機動戦士ガンダム」などのアニメ監督である富野由悠季氏はインタビューで、「変わるべきは若者たち自身ではなく、若者を取り巻く環境であり、上の世代である」と強く訴えています。これはまったく同感です。

上述の山田氏のコメントにもあるように、制度的な変革も重要ですが、上の世代の果たす役割は、若者の意識・行動形成に直接的に関わるため、さらに重要といえます。しかしながらここが、どんどん機能しなくなっている。たとえば、「若者は酒を飲まなくなった。酒を飲みながらコミュニケーションをしなくなった」という状態について。これはあるマンガの受け売りですが、ビールの売り上げが落ち込んで、替わりに安いまがいもの「第三のビール」がどんどん売れている世の中で、どうして若者がおいしく酒を飲もうとするでしょうか。「うまい酒」がなんなのか、上の世代が下の世代に伝えることを放棄しているのではないか。「消費をしなくなった」という話も、不景気ムードになると一気に生活防衛一色に染まる消費行動を見て、どうして若者が積極的に消費しようと思うものでしょうか。

親の背中を見て子は育つもの。若者の今に原因があるのだとすれば、結局それは上の世代がどこかで種をまいていたのだということ。今から彼らを変えることは容易ではないと達観しつつ、さらに続く世代をなんとか軌道修正していくために、とにかくまず上に立つ世代が歯を食い縛って変わっていくしか道はないでしょう。

またしてもマンガの受け売り。連載終了後数年経ってもなお輝きを失わない名作『HEAT』(武論尊原作、池上遼一作画)の主人公・唐沢辰巳の名台詞より。

「親が強けりゃ、子は迷わねェ」
posted by サイダー at 01:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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