2008年01月30日

裁判員制度考

ご無沙汰しております。

最近やたらと寒い日が続いておりますね。日経のコラム「春秋」では、「別にこんなきつい時期にあえて大学入試センター試験とかやらなくてもいいんじゃないか」と書いてありましたが、まったくその通りだと思いますね。多くの人が避けて通れない大学入試は、制度優先で利用者側の視点に立つ必要がない世界なので、ずっとそんなことになっているわけですな。

さて。

最近NHKのニュースで見たのですが、刑法の条文に載っている「略取」や「教唆」なんていう言葉を平易でわかりやすいものにしていこうという取り組みが行われているようです。平成16年度から5年以内に施行されるという裁判員制度もそうですけど、裁判所は「国民に分かりやすい司法」に向けての取り組みを、いろいろと進めているようですな。

そんな裁判員制度。仲間由紀恵を起用した告知のキャンペーンを行ったりしていたなあという以外に、特段考えたこともなかったけど(大学は法学部出身なのに…)、よくよく考えてみると、どうなのかなあという気もしてくる。

最高裁判所のホームページには裁判員制度の導入趣旨として、「国民に身近で、分かりやすく迅速な裁判を実現」なんてことが書いてある。ぱっと見は誰も文句の言いようのない優等生的な話なのだが、迅速な裁判は裁判制度の運用上必要としても、別に国民に身近で分かりやすい裁判である必要はないのではないか。

裁判、特に刑事裁判って制度は、裁かれる側の人間の自由と人権をどう扱うか決めるための手続きである。その手続きを進める上で一番重要なのは、やっぱり裁かれる本人にとって、裁判が公正であり正確であると感じられることであろう。裁かれる当事者ではない国民の方を向く必要があるのかしら。

国民にとっての「裁判の身近さ・分かりやすさ」と、裁かれる本人にとっての「裁判の公正さ・正確さ」が同じものであれば問題はないのだけれど、当然ながら両者はまったく異なるものである。朝と昼のワイドショーに影響を受けているような国民の分かりやすさなんかを追求すると、また松本サリン事件の河野さんのようなことになりかねないと思ってしまう。

そもそも、もしも自分が被告人だったら、裁判員に判決を委ねるような真似は絶対にしたくない。法律の素人が、それこそ「市民感覚」で人を裁くことほど恐ろしいものは無いと思う。人を裁くことの意味、法律を人間に適用し、人の自由と権利を制限することの意味をしっかり学んできたプロフェッショナルでなければ、裁判はやってはいけないと思うのだが。もしも別の仕事のことを気にしながら片手間でやっている裁判員たちに、多数決で変な結論を出されたら死んでも死に切れないと思う。

何のために裁判官はいるのだろう。何のために法律を勉強させて、厳しい試験まで設けて、司法権の独立まで与えているのだろう。裁判員制度の導入ということになって、悔しがる、憤っている法曹はいないものだろうか。はっきり言って、今の裁判・今の裁判官は世の中になめられている。なめられているから、世の中に尻尾を振らざるを得なくなるのだ。それが一人の国民として、とても情けなく感じる。そんなに国民に分かりやすい司法がやりたいのなら、国民に開かれた処刑ということで街で公開処刑でもやったらよろしい。

ちなみに、裁判制度の「真の利用者」は被告人であるにもかかわらず、被告人に「裁判員参加を拒む権利」はなさそうだ(個々の裁判員への不選任要求はできるが)。センター試験もそうだが、こちらも本当の利用者側の視点に立って、考え直したらよいのでは。
posted by サイダー at 22:28| Comment(2) | TrackBack(2) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
まったくもって、同感
Posted by kst at 2008年01月31日 01:03
ご無沙汰しとります。

我々の友人知人たちが、やがて法曹界を内から変えてくれることを、切に望んでいますよ。
Posted by saida at 2008年01月31日 19:18
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